ぼちぼち通信
ぼちぼち通信
2024.8
台風に翻弄された1週間でした。皆様の地域は大丈夫でしたでしょうか。
神戸は雨が多かったですが、台風の怖さはありませんでした。
虫が鳴いています。舞子の浜ではトンボが飛んでいました。秋ですね。
大きい子ではマイコプラズマ、小さい子ではRSウイルス感染症が目立ちます。
「咳、咳、咳・・・咳がよくなりません!」に悩まれる毎日です。
RSウイルス感染症(RS)は1歳までに50%、2歳までに100%のお子さんが、1回はかかると言われています。
RSは1歳以上の子なら、5日間くらい熱が上がり下がりして続き、だんだんと咳がひどくなり、喘息様気管支炎や肺炎になる子もいます。
1歳までの子のRSは、発熱の期間は短いですが、とにかく咳がひどく、ぜーぜーして、発症から5-7日目にピークを迎え、呼吸が苦しくなり入院になることもあります。
特別な治療法はなく、対症療法で嵐が過ぎるのを待つしかありません。
そして、一般のお子さんには予防法がありませんでした。
2024年5月、RSウイルス母子免疫ワクチン(アブリスボ®)が発売されました。
これは24~36週の妊婦さんにRSウイルスワクチンを接種して、RSに対する抗体を妊婦さんに作らせ、これが胎盤からおなかの赤ちゃんに移行し、赤ちゃんのRSウイルスに対する抗体価を上げて、生まれた赤ちゃんのRSウイルス感染を予防しようという作戦です。
妊婦さんへのインフルエンザワクチンや新型コロナワクチンも、おなかの赤ちゃんの抗体価を上げると言われていましたが、妊婦さん自身の感染予防・重症化予防のためでもありました。
RSウイルス母子免疫ワクチンは、お母さんがRSにかかっても重症化することはなく、ほぼ赤ちゃんのためにうつワクチンです。
私は妊婦さんがRSウイルス母子免疫ワクチンをうつかな?と思っていました。
赤ちゃんに移行したRSウイルス抗体の効果は半年くらいしかもたないし、赤ちゃんがRSにかかっても皆が重症になるわけでないし、自費で3~4万円と高いし、もし、妊娠中に何かあったら、ワクチンのせいでなくても気になるだろうし・・・と、勧めかねていました。
しかし、8月になって、2名のRSウイルス母子免疫ワクチンを接種されたお母さんに出会い、考えが変わりました。
母は強し、です。
臨床試験において、このワクチンの有効性は、重度のRSウイルス下気道感染症に対して、生後90日で81.8%、生後180日で69.4%でした。医療機関の受診を必要とするRSウイルス下気道感染症に対して生後90日で57.1%、生後180日で51.3%の有効性ということでした。https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=559
これは、妊婦さんがワクチンをうつことで、生まれた赤ちゃんは、生後半年までは、50%がRSウイルスに感染せず、入院となるような重症例も70%減らせるということになります。入院を70%減らせるのは大きいと思います。
ワクチンの副反応は、接種部位の腫れなどの他のワクチンで見られるものはありますが、早産など胎児への影響は有意なものはないとのことです。
うつかどうか決めるのはお父さんお母さんですが、情報提供はしていかないと思います。
もう一つ。
RSウイルス感染症の予防に、抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体製剤『パリビズマブ』(シナジス®)というのがあります。
赤ちゃんが生まれてから、RSウイルス抗体を赤ちゃんに筋肉内注射して、抗体価を上げて、予防しようというものです。これも効果的でありましたが、対象は早期産のお子さん、先天性心疾患、ダウン症などに限られています。
そして、毎月、注射しないといけませんでした。
それが、2024年5月、1回注射したら半年効果が持続する抗 RS ウイルスヒトモノクローナル抗体製剤『ニルセビマブ』( ベイフォータス®)が発売されました。
痛い注射が1回というのはうれしい。
これも保険適応は限られていますが、自費なら一般のお子さんに使えます。
ただ、体重5㎏未満で46万円、5㎏以上なら91万円とのことで、お高いです。
すでにこの注射を受けた赤ちゃんも受診されました。
RSウイルス感染症の予防が変わっていっているのを感じます。
妊婦さんのRSウイルスワクチンは普及するだろうか?
公費助成があるといいが・・・。
時々、産業医講習を受けに行っている。
日本は出生数が減り、労働人口がどんどん減ってしまい、今の経済が回せなくなるそうである。
私が子どものころ1968年、日本の国内総生産(GDP)はアメリカに次いで世界2位になった。2010年に中国に抜かれ、3位。2023年にドイツに抜かれ4位とのこと。
人口が減るのだから、経済規模を縮小して、アメリカと中国に頼りながら、こじんまりと静かに幸せに暮らしていこうよと思う 。
経済成長をめざして、労働者が無理に働いて、病気になったり、自殺したりするようでは元もこうもない。
令和5年の過労死等の労災補償状況の資料が産業医講習会ではよく配られる。 https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001276368.pdf
過重労働などによる病気、精神障害と認定されて労災が下りた数が示されている。これは申請して認定されたものだけで氷山の一角だと思う。
過重労働による脳・心臓疾患と認定された方は、生活習慣病の要素も絡むからか、年齢が上がると増え、男性に多い。
一方、職場でのストレスが原因で精神障害をきたしたという方は、若い人にも多く、男女差はない。
さらに、脳・心臓疾患や精神障害により死亡した人は、女性の方が少ない。
精神障害の件数は男女同じくらいなのに。女性の方が強いのか、逃げるのが上手なのか。
労働事故による死亡も含め、仕事で死亡するようなことがないようになってほしい。
もう一つ気になったことがある。
女性労働者が働き盛りに仕事を離脱し、経済損失になっているという話である。 2023年のがん統計によると、35~54歳は女性の方が男性よりがん罹患数が多い。
35~54歳の女性で多いがんは、1位:乳がん、2位:子宮頸がん、3位:卵巣がんなのである。女性は出産も終わりかける年齢になって、次はがんで仕事を休まなければならなくなることが男性より多い。
がんの統計 2023 (ganjoho.jp)
これを知ったとき、乳がん、卵巣がんは防げないが、せめて子宮頸がんだけでも、ワクチンで防ごうよと、講習会を受けながら思った。
若い女性方、子宮頸がんワクチンをうとうよ。
著者 たかのこどもクリニック 院長 高野智子
アレルギー
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