ぼちぼち通信
ぼちぼち通信
2025.7
暑いですね。
「熱中症で死ぬで」と言われながら、自宅では汗をかいて生活しています。今年は首にアイスノンを巻くようになりました。これがなかなか快適です。
暑さでウイルスも弱っているのか、大きく流行る感染症はないです。発熱の多くは“夏風邪“と言うものではないかと思います。
あと1ヶ月は暑いですが、この暑さを元気に乗り越えましょう。
2025年4月から感染症定点医療機関では、ARI(急性呼吸器感染症:Acute Respiratory Infection)の数を報告しています。
どのような疾患の数を報告するかというと、「発熱の有無は問わず、咳嗽、咽頭痛、呼吸困難、鼻汁、鼻閉のいずれかの症状を呈し、発症から10日以内の急性的な症状であり、かつ医師が感染症を疑う外来症例」となっています。風邪から気管支炎・肺炎までを含むことになります。
当クリニックも感染症定点医療機関となっており、毎週報告させていただいています。
来られる患者さんの半分はARIです。
今、夏風邪が流行っていて、高熱があり、喉は赤いが、咳嗽、咽頭痛、呼吸困難、鼻汁、鼻閉のいずれの症状も来さない患者さんもおられて、判断に困ることもあります。
これが始まって、一ついいことがあります。その風邪の原因を調べてくれることです。
神戸市の健康科学研究所はとっても熱心に、レベル高くやっておられ、とっても助かります。
マニアックなデータを示しますが、
グラフの棒の一番下の青が百日咳、その上のオレンジがライノウイルス、その上の緑がパラインフルエンザウイルスです。
4月から6月はこれらが多かったのですが、7月はグラフの棒の上の茶色のコクサッキーウイルス、その下の紺色のエコーウイルス、その下の黄緑のパレコウイルスが出てきました。7月は4-6月より、さらにいろいろなウイルスが出ています。
コクサッキーウイルスは夏風邪のウイルスの一つで、現在のヘルパンギーナの原因になっています。
エコーウイルスは顔、手足、体にぷつぷつと発疹を伴うことが多いウイルスです。
パレコウイルスは無菌性髄膜炎のウイルスとして検出されていることが多く、特に赤ちゃんの重症の無菌性髄膜炎の原因となっていることが多いようです。
と、患者さんの風邪の原因がわかり、勉強になります。
ただ、日々の臨床では、患者さんを診察して、このウイルスとわかることは多くはなく、夏風邪でしょうというあいまいな診断で、すみません。
こどものB型肝炎は減りました。
これは輸血、血液製剤がきっちり検査されB型肝炎の血液が使われることがなくなったこと、1986年からB型肝炎のお母さんから生まれるお子さんはすぐに免疫グロブリンやワクチンで予防されるようになったこと、そして、2016年からB型肝炎ワクチンが生後2か月から全員に定期接種されるようになったこと、によります。
現在、こどものB型肝炎は3000人に1人以下です。
でも、いないわけではありません。
B型肝炎のお子さんが保育所に入れないという事例をいくつかの地域でお聞きします。
保育所での感染予防が十分にできないからという理由で。
B型肝炎はB型肝炎の人の血液や体液(よだれ、涙、尿など)にふれ、目に見えないような傷であっても傷があると感染しやすいです。
特にこどものB型肝炎はウイルス量も多く、感染しやすい。そして、こどもはけがをして血を流したり、よだれや涙を流したりすることも多いです。
だから、保育施設でのB型肝炎の感染予防はケアする方の手袋と、周囲の方のB型肝炎ワクチン接種が必要だと思います。
現在、保育所に入っているお子さんは、定期接種で95%の方がB型肝炎ワクチンをうっておられます。
しかし、保育士さんはうっている方が非常に少ない。2019年に大阪で調べたときは7%しかうっていなかった。最近、とある市町の保育士さん80人くらいにお聞きして1人しか、B型肝炎ワクチンを接種していなかったです。
保育士さんは無防備です。これはまずいと思います。
古い話になりますが、2002年佐賀県の保育所で25名(園児19名、職員6名)のB型肝炎の集団発生がおこりました。
https://www.asunet.ne.jp/~bbb/92-27.html
そのころ、子どものB型肝炎ワクチンは定期接種ではありませんでした。
一人のB型肝炎の保育士さんを発端として、感染が広がったと報告されました。その保育士さんのその後の人生は悲しいものになりました。
B型肝炎感染はワクチンをうって免疫さえ付いていれば、ほぼ100%予防できます。
保育士さんは自分の身を守るために是非ともワクチンをうってほしい。
そして、B型肝炎のために子どもが保育所に入れないという、差別が起こらないようになってほしい。
そのためには、保育施設で働く方は全員B型肝炎ワクチンをうつようにガイドライン等で規制きたらいいのにと思いますが・・・。そこに、保育施設で働く方のワクチン接種への公的補助があったらさらにうれしいですが・・・。
著者 たかのこどもクリニック 院長 高野智子
アレルギー
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