ぼちぼち通信
ぼちぼち通信
セミが鳴き、入道雲がわき、夏になりました。
暑い日が続きますが、お変わりございませんか。
お子さんたちは夏休み、楽しんでおられますか。
パリ五輪が始まっています。夜中の中継もあり、寝不足の方もおられるのでは。
手足口病が流行っています。新型コロナが少し増えています。そして久々に、マイコプラズマ感染症が流行っています。
以前は2012年、2016年にマイコプラズマの流行がありました。4年ごと、オリンピックの年に流行るといわれていましたが、2020年は新型コロナウイルス感染症の流行もあり、マイコプラズマの流行はありませんでした。久々の流行です。
マイコプラズマ感染症は、マイコプラズマという菌が気道に感染しておこります。
風邪の様に始まり、夜に上がり朝に下がるような発熱、のどの痛み、咳を認めます。鼻水は少ないです。そして、咳がだんだんひどくなります。夜間も咳が出ます。
約10%が肺炎になります。発熱のない例もあります。
小学生以上の子が、診察室でも、ゴホンゴホンと深い咳をするときは、マイコプラズマが気になります。
当クリニックでは6月末からマイコプラズマ感染症の患者さんが増えています。
全国的にも4月上旬からじんわり増えだし、5月下旬から明らかに増えだし、まだピークは越えていないようです。
久々の流行でマイコプラズマに免疫のない人、免疫の低くなっている人も多いと推測され、マイコプラズマの潜伏期が2~3週間と長いこともあり、まだ流行は続きそうに思います。
マイコプラズマは幼児より、小学生に多い感染症です。大人も感染します。
当クリニックで11歳以上が少ないのは、大きい子の感染が少ないのか、大きい子は小児科を受診しないのか、または検査をしていない例が多いのか、いろいろ理由がありそうです。
マイコプラズマの診断は喉の拭い液を取って、LAMP法やPCR法でDNA検査をするとyより確実なのですが、それは時間がかかり、実用的ではありません。それで、当クリニックではマイコプラズマの抗原検査をしています。
抗原検査は、他のウイルスなどの抗原検査より陽性率が低く、65%くらいです。マイコプラズマであっても、マイコプラズマと診断できるのが65%ということです。陽性であれば、診断できるのですが、陰性の時は否定できないということになります。
これは、マイコプラズマが主に気管(肺の空気の通り道)にいて、のど(咽頭)には気管の100分の1しか菌がいないことによります。検査の時、咳をしてくださいとお願いするのは、気管から少しでも菌がのどに出てきてほしいからです。
大きい子はのどに棒を突っ込むと、嘔吐反射も強く、検査を嫌がりますので、マイコプラズマが否定できない症状なら、検査をせずに薬を出していることもあります。
それもあり、ここに示したより、マイコプラマの感染者はもう少し多い可能性があります。
当クリニックからも2例が入院になっています。
マイコプラズマは、クラリス®、ジスロマック®などのマクロライド系内服抗菌薬で治療するのですが、これらの効かないマイコプラズマ(変異株)がいます。
2012年には薬の効かないマイコプラズマが80-90%ありましたが、2018-2020年には30%以下になっていました。IASR 45(1), 2024【特集】マイコプラズマ肺炎 2023年現在 (niid.go.jp)
今回の流行の変異株の割合はどうでしょうか?
当クリニックで、マクロライドの抗菌薬を内服しても3日間熱が下がらなかった4例を調べると、4例とも変異あり(薬の効かないマイコプラズマ)でした。
現在、小さい子はRSウイルス感染症が流行っており、新型コロナウイルス感染症も熱がなく咳がひどいというだけの症例もあり、咳に悩まされる毎日です。
インフルエンザワクチンの接種回数は、米国やWHOでは、生後6か月~8歳の小児では、接種が初めての場合は4週間以上あけて2回接種、それ以降の年は1回接種。9歳以上では、過去の接種の有無に関わらず、1回接種が推奨されています。
現在、日本では、生後6か月以上13歳未満で2回接種、13歳以上は1回接種と規定されています。
どうしてこうなったのでしょうか。
日本は2010-11年シーズンまで、インフルエンザワクチンの接種量は生後6か月以上1 歳未満が0.1 mL、1歳以上6歳未満が0.2 mL、6歳以上13歳未満が0.3mL、13歳以上が0.5mLでした。これは、世界標準より少ない接種量でした。
この投与量が少ない時の研究で、0~15歳のワクチンによるインフルエンザの予防効果が1回接種で54.0%、2回接種で79.8%であり、2回接種の方が予防効果が高いとなりました。(Kawai N, et al. Vaccine. 2003;21(31):4507-13)
それで2回接種が行われてきました。
2011-2012シーズンに、インフルエンザワクチン接種量が世界標準になりました。
現行の、生後6か月から3歳未満が0.25 mL、3歳以上が0.5mLに変更となりましたが、接種回数は世界標準に変更されませんでした。
少し専門的になりますが、インフルエンザワクチンの接種量が世界標準になってからのデータを二つ示します。
一つは、
国内の2013-2014シーズンに6か月~15歳の小児でインフルエンザワクチンの予防効果を調査した研究では、すべてのインフルエンザに対して、1回接種と2回接種でその効果に差はなかったことが示されています。
ただ、細かく見ると、A型インフルエンザに対しては2回接種の方が1回接種より少し効果が高く、インフルエンザB型に対しては1回接種も2回接種も効果は同じということです。(Shinjoh M, et al. PLoS One. 2015;10(8):e0136539)
二つ目は、
インフルエンザワクチンには新型インフルエンザ(A/H1N1)、従来のインフルエンザA(A/H3N2)とインフルエンザBの抗原が入っています。
2011-2012シーズンの接種量が変更になった時に行われた調査では、6歳以上13歳未満の小児におけるA/H1N1、A/H3N2に対する抗体陽性率は、1回接種後と2回接種後で差はありませんでした。
ただ、6歳未満では少し違いがあり、
3歳以上6歳未満の抗体陽性率は
1回接種 | 2回接種 | |
A/H1N1 | 66.7% | 72.2% |
A/H3N2 | 99.4% | 99.4% |
と、わずかな差がありました。
一方、1歳以上3歳未満の抗体陽性率は
1回接種 | 2回接種 | |
A/H1N1 | 52.9% | 76.5% |
A/H3N2 | 64.7% | 94.1% |
と、差がありました。
やはり、初めてインフルエンザワクチンを接種する年齢のお子さんは、2回接種がいいように思います。
と、いろいろ難しいことを言いましたが、予防効果に違いがないなら、無駄に痛い思いをしなくてもいいのではないかと思います。
インフルエンザワクチンの
接種回数の提案
3歳以上の方でも、2回接種ご希望の方は2回接種されて悪くはないです。
2回接種の方はできれば4週開けて2回接種しましょう。
3歳以上のお子さんで、1回接種に納得される方は1回接種にされてはどうでしょう。
著者 たかのこどもクリニック 院長 高野智子
アレルギー
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