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ぼちぼち通信-No39|垂水区の小児科・アレルギー科 たかのこどもクリニック|

ぼちぼち通信

ぼちぼち通信
BochiBochi Tsushin
No.39
2023.12
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お元気ですか。
寒くなりました。朝、車に乗ったときの外気温が1℃の日もありました。
インフルエンザB型が増えてきています。少し新型コロナも出てきました。溶連菌はコンスタントに出ています。
ウイルスや細菌が自分の生き場所を求めて必死で頑張っているように見えます。我々も負けずに行きましょう。
2023年もお世話になりました。2024年もよろしくお願いいたします。

-小学6年になったら子宮頸がんワクチンを受けよう-

子宮頸がんワクチン(ヒトパピローマウイルス:HPVワクチン)の勉強に行ってきた。 このワクチンは2011年2月に接種が勧められるようになり、2013年4月には定期接種になったワクチンである。しかし、定期接種から2か月ばかり過ぎたころに、積極的接種を勧めないワクチンになった。

 

ワクチン後の副作用が強く、けいれんを起こしたり、歩けなくなったりする子がいて、脳に障害を起こすと報道され、多くの人が恐れおののいた。センセーショナルな映像が流れ、どの親御さんもこのように恐ろしいワクチンを子どもにうたせたくないと思った。
定期接種時の接種率が80%台であったのが、接種率は0%に近いところにまで激減した。

 

その後いろいろ調査がなされ、脳に障害がおこることはなく、女性数万人を対象とした名古屋での大規模研究でも、HPVワクチン接種後に起こると報告されたいろいろな症状は、HPVワクチンをうった人とうってない人で違いがないというデータが発表された。
世の中にはワクチン反対の人たちがいて、その人たちの勢いにまんまとはまった感じである。世界では同じワクチンが変わりなく接種されていたのに、日本は接種を控える時期が続いた。

 

どのワクチンにも副反応はゼロではないが、HPVワクチンだけが副反応多いのではないことが明らかになった。副反応の確率とワクチン接種によるメリットの確率との力関係で接種するかが決まるものであると思う。 2022年11月に再び積極的に接種を勧めることとなり、2023年4月からより効果の高いシルガード9というワクチンが使えるようになった。

 

今回勉強に行って、HPVワクチンを早くに接種することのメリットが大きいと感じた。早く、つまりボーイフレンドができるまでに(性交渉を経験する前に)接種すべきである。

 

子宮がんは女性で5番目に多いがんである。女性のがんの7%を占める。 国民の1/3ががんになるのだから、年をとって何かのがんになるなら仕方ないと思われるが、子宮頸がんの発症は30歳代と50歳以降に発生のピークがある。30歳代のがんはきつい。
子宮頸がんの95%はヒトパピローマウイルス感染が原因だそうである。
ヒトパピローマウイルスは性交渉によって男性から感染する。男性はこのウイルスに感染しているわけでないが、女性の子宮頚管にいるウイルスの運び屋となる。性病的なのであるが、男性が発症しない点が他の性病とは違う。

 

女性の80%は生涯に1回はこのウイルスに感染し、そして、その80%はウイルスを自力で排除し、自然に治るそうである。局所の免疫でウイルスを排除してしまうので、感染しても抗体価はあまり上がらず、何度でも感染するとのこと。
感染しても自覚症状はないが、子宮頚部は 正常とは異なる形の細胞ができて前がん状態になる。
ウイルスが排除できれば、前がん状態はよくなるが、20%の人はウイルスが排除できず、ウイルスが子宮頚部の細胞のDNAに入り込み、がん抑制遺伝子を抑止しがん化していくそうである。

 

子宮頸がんにならないためにはこのウイルスに感染しないのが一番目の予防である。 そのために、HPVワクチンをうとうということになった。ワクチンを接種すると95%、感染を予防できるそうである。

 

次の予防は子宮がん検診を受けて、がんの早期発見をすることである。ヒトパピローマウイルスに感染してがん化していく人を早くに見つけて手術をするのがよい。しかし、子宮がん検診の受診率は40%と聞く。

 

ヒトパピローマウイルスは感染して数年たってがんになる人(30歳ころの発症)と、感染は若いときにしてもウイルスは静かに潜んでいて、それが再び暴れだして(再活性化)がんになる人(50歳以降)がいて、過去に性交渉があった人は、そういうことがなくなっても子宮頸がんになる可能性があるそうである。 いくつになっても、閉経しても、子宮頸がん検診を受けましょう。
お母さん方、お忙しいとは思いますが、子宮頸がん検診を2年に1回くらいは受けましょう。

 

女性はヒトパピローマウイルスに何度も感染するのであるなら、次の感染予防のために、何歳になってワクチンをうっても効果があるのでないかと考える。しかし、残念ながら、一度感染してしまうと、ワクチン接種による抗体価が上がりにくそうである。つまり、性交経験があるとワクチンの効果が低い。

 

このデータがそれを示す。

インフルエンザ・溶連菌・アデノウイルスの陽性者のグラフ

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1917338

スウェーデンのデータであるが、17歳までにHPVワクチンを接種した人は子宮頸がんの発症が明らかに低い。

 

いつボーイフレンドができるかわからないから、早くに、小学6年になったらHPVワクチンを接種してしまうのがいいと強く思った。
これで一つのがんになることが95%防げるなら、もうけものである。

医師の働き方改革

2024年4月から医師の働き方改革が本格的に始まる。 医師の時間外労働に上限を設けて、医師が健康的な状態で働けるようにし、質のいい医療を提供しようというものである。

そこで問題となったのが、当直の扱いと自己研鑽の時間の扱いである。

 

当直にもいろいろあって、本当に働いている当直から、寝当直と言って(病院には当直医師を置かないといけない決まりがあるよう)、何も起こらなければ寝ているだけの当直もある。救急医のように夜も普通に働いている人は勤務としたらいい。これは問題ないが、寝当直が問題となった。これは働いた実質時間が勤務扱いとなったようである。しかし、自分の布団でない、いつ呼ばれるかわからないところで寝て、十分休息が取れるのか。 自己研鑽とは医学の勉強をしたり、学会発表の準備をしたり、論文書いたりの時間である。

自己研鑽は上級医(立場的に上の医者)が指示して行う場合は勤務扱いとなり、自ら進んで行う自己研鑽は勤務扱いとはならないということになった。これもおかしな話である。 どの分野もそうであろうが、医療も勉強せずしてやっていける分野ではない。
自分を顧みて必死で何十年やってきてこの程度なのであるから、甘くはないよ。若い医師は自己研鑽してほしい。

 

今、病院の上級医は若い医者に対し遠慮がちに働いているそうである。
勤務終了時間近くに、患者さんが来られると、若い先生と問診、診察、検査して、検査結果が出るころには勤務時間が終わっている。

検査結果が出ても、勤務時間が終わっていると、若い先生は結果を見に来ないし、上級医も若い先生を呼べないそうである。
自分の見た患者さんの検査結果を知りたくないのか・・・と疑問に思う。
働き方改革優先で勉強の機会を失うのはなんとももったいない。医療は患者さんから学ばないと。

 

時間外労働を減らし、医師が健康に働けたとしても、医師の働く延べ時間が減れば、医療の量は減り、量が減るということはサービスの質は落ちる。
医師の働き方改革を進めながらも医療の質を保つなら、勤務医をもっと増やさないといけない。
そして、医師の給料は時間外労働で保たれているのであるから、それを減らすなら勤務医の給料をアップしないと、モチベーションは落ちるのでないか。
学会発表や論文発表で自己研鑽している先生も、自ら進んでやっていることは仕事として何も評価されないのであれば、これもおかしな話である。

 

働き方を一律に時間だけで規制してしまうことに疑問を感じる。 働きたい人は働いたらいいし、ほどほどに働くのでいい人はそれでいいと、柔軟に対応できないものか。
過労死者を出さないためにも、本当は個別の対応が必要なのではないかと思う。

 

著者 たかのこどもクリニック 院長 高野智子

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