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ぼちぼち通信-No38|垂水区の小児科・アレルギー科 たかのこどもクリニック|

ぼちぼち通信

ぼちぼち通信
BochiBochi Tsushin
No.38
2023.11
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急に秋がやってきました。皆さん、お元気でしょうか。
診療中も冷房がいらなくなり、スタッフたちはユニフォームの下は半袖でいいそうですが、私は長袖でないと寒くなってきました。
9月から10月、インフルエンザA型が流行っています。インフルエンザ流行中のインフルエンザワクチン接種となっています。このワクチンはいつの流行を予防するのか・・・。
新型コロナウイルス感染症はめっきり減りましたが、思いもよらない人で陽性に出る感じです。ウイルスが生き残りをかけて頑張っているように感じます。
寒くなっていきますが、ウイルスに負けないように頑張っていきましょう。
阪神も日本一になりましたし。

-溶連菌感染症が
流行っています-

現在、インフルエンザA型の流行の陰で、この地域では、溶連菌感染症が多い。小学校低学年くらいに多く、インフルエンザも流行っている年齢であり、インフルエンザを疑って受診される。当クリニックの7月末からのインフルエンザ、溶連菌、アデノウイルスの陽性者数を示す

インフルエンザ・溶連菌・アデノウイルスの陽性者のグラフ

インフルエンザほどの見た目の重症感はなく、喉を痛いと言い、真っ赤な咽頭(のど)、扁桃の腫れを認めれば、ほぼ100%溶連菌感染症である。ただ難しいのは、喉が痛いというが真っ赤な咽頭所見がなく、扁桃だけ腫れている症例もある。のどの痛みもなく、咽頭の発赤もさほどなく、首のリンパ節が腫れている溶連菌感染症の子もいる。

 

溶連菌感染症には非常にまれではあるが、溶連菌が血液に入り込み(菌血症)、いろいろな臓器に悪さをして(敗血症性ショック)死に至ることもある劇症型溶連菌感染症もある。石川県の先生が最近、成人(主に老人)の劇症型溶連菌感染症が多く、死亡例も多いと言っていた。

 

もう一つ注意は、溶連菌感染症は感染に伴う免疫反応が、感染から2-3週間後に自分自身の臓器に免疫反応を起こしてしまうことがある。溶連菌感染後の急性糸球体腎炎を起こしたり、リウマチ熱といって、関節炎、心炎、異常な不随意運動(舞踏病)を起こしたりすることがある。これらは一種の免疫の病気でみんなに起こるわけではない。

 

溶連菌感染症は細菌感染症で、抗菌薬で治療する。ペニシリン系の抗菌薬でいいのであるが、現在、それが手に入らない状況で、セフェム系抗菌薬を処方している。
溶連菌は抗菌薬の効かない菌がなく、どの抗生剤でも効くと言われている。
しかし、抗菌薬を飲み終わって、1週間くらいで再燃してくる子がいる。のどが痛くて、真っ赤な喉を見る。検査すると溶連菌である。
溶連菌にも型がいくつかあり、何回もかかることはあると言われているが、治療してすぐとなると除菌されてなかったのであろう。残念!申し訳ないがもう一度治療する。

 

「あとで腎臓の病域にならないように抗菌薬ちゃんと飲んでね」と患者さんに言っていたが、溶連菌感染の抗菌薬治療で、リウマチ熱の心臓の合併症を減らすことは言われているそうであるが、腎炎の発症を抑えるというデータはないとのこと。
治療するのは発熱などの症状を早くに抑えることと、他への感染を抑えるためとのこと。
抗菌薬を内服すると24時間くらいで、解熱し、人への感染の可能性はなくなるとのことである。

 

もう一つ特記すべきは、溶連菌の健康保菌者が、学童であると15-30%くらいいるとのことである。健康な子を検査して、溶連菌が陽性だからと治療する必要はないとのことである。

 

また、3歳未満の子の陽性者は少ない。兄弟がかかっていても、3歳未満の子は感染していないことが多い。3歳未満の子の発熱の原因とはなりにくいようである。

 

3歳以上の子で、発熱、喉が痛い、真っ赤な喉をみたら、検査するようにしている。
溶連菌の流行により、溶連菌感染後の腎炎やリウマチ熱が増えないことを願う。

おとなの発達障害

学校医が職員のメンタルヘルスケアにも対応できるように産業医を持っているといいとのことで、現在、産業医の勉強中である。50単位の講習が必要で、土日にちまちま講習に行っている。近くでの講習が少なく、なかなかであるが。

 

今日はおとなの発達障害を勉強してきた。
働いている人でうつ病を発症した人の30%くらいに発達障害があるそうである。主に自閉症スペクトラム(ASD)と注意欠陥多動症(ADHD)とのことであった。これらは生まれつきの脳の発達の偏りで、育てられ方という問題ではないとのこと。

 

例えば、専門職でやっているうちはよかったが、中間管理職になって、人との関係性がうまく取れず、うつになってしまった人に発達障害があった例などが紹介されていた。
この人たちも、発達障害があるという自分の特性を理解し、リワークという精神科的なリハビリを受け、職場復帰していくそうである。発達障害は治りはしないが、その特性をカバーするような行動パターンを模索し、習得していくとのこと。

 

人とのかかわりが苦手な人は昔からいたであろう。昔は1次産業とか家内工業とか、人との関係性がうまく取れなくても働ける職場があって、何となくカバーされていたのかもしれない。
現在、人との関係性がうまく取れることと、パソコンなどの電子機器が使えることが必須の世の中になってしまった。これが苦手な人には生きにくい世の中であろう。
しかし、この人たちも専門的な分野では卓越した能力を示す人も多い。
発達に凸凹のある人も大切にする、活かせる世の中であってほしいと思う。

 

おとなになって発達障害に気が付かれる人もいるが、子どものころから発達障害といわれている子が、大人になっておとなの発達障害と言われている人もいるであろう。
こういう子たちに、子どもの時から何かトレーニングしたら、大人になってからの苦労が少ないのであろうか。もしそういう有効な方法があるのであれば、手助けしてやりたいと、講義を聴きながら思った。
発達障害の子にいろいろ行われている机上のトレーニングが有効なのであろうか・・・。

 

著者 たかのこどもクリニック 院長 高野智子

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