ぼちぼち通信
ぼちぼち通信
お元気ですか。
暑い日もありますが、秋ですね。すじ雲やうろこ雲を見かけるようになりました。
インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、アデノウイルス感染症、溶連菌感染症などなど、いろいろなものが流行っています。あんなに大騒ぎした新型コロナも風邪の一員になったようです。
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/20-眼の病気/結膜と強膜の病気/感染性結膜炎
熱がなく、目の赤い子がやってくる。ときに連れてこられた親御さんの目も赤かったりする。
アデノウイルスによる結膜炎、流行性角結膜炎が流行っている。
アデノウイルスにはたくさんの型があり、型により起こす病気に違いがある。
病気 | おこす頻度の高いアデノウイルスの型 |
咽頭結膜炎(プール熱) | 主に3型 |
流行性角結膜炎 | 8型、19型、37型、53型、54型、56型 |
感染性胃腸炎 | 31型、40型、41型 |
肺炎 | 3型、7型 |
出血性膀胱炎 | 11型 |
https://www.niid.go.jp/niid/ja/adeno-pfc-m/2110-idsc/4th/4326-adeno-virus-page2.html
アデノウイルス感染症は潜伏期間が5~7日で、便や飛沫、直接接触により感染経する。種が多いため、何度も同様の病気になる場合があるとのこと。
咽頭結膜熱で目が赤くなったり、下痢をしたりすることもあるが、流行性角結膜炎より、感染性胃腸炎より、症状は軽いと思う。
若いころ、流行性角結膜炎の子を診療していたら、眼科の先生に「あなた、これは怖い病気なのよ。眼科に診せなさい。」としかられた。結膜炎(目が赤い)だけならいいが、角膜炎を起こすと、とっても目が痛く、角膜に濁りが残り、弱視になってしまうことがあるそうである。
親御さんにはお子さんが目を痛がる、まぶしがるなら、眼科を受診するようにお願いしている。
目の炎症が強いと、ステロイドの点眼を出したくなる。でも、ステロイドは眼圧を上げ、弱視になってしまうことがあるそうである。子どもではステロイドにより眼圧の上がる子が多く、50%と聞いた。流行性角結膜炎は治る病気なのだから、目やにが多ければ抗菌薬の目薬を出して、待つのがいいと思うようになった。
もう一つ、この病気が厄介なのはとっても感染力が強いことである。接触でうつるから、タオルを共有してもうつってしまう。
症状が治まるまでは、学校や幼稚園・保育所はお休みして、登校・登園許可が必要な病気である。麻疹、水痘、咽頭結膜炎などと同じ扱いなのであるが、世間を見ていると、ルールが守られていないことが多い。特に保育所などは接触も多いからか、流行してしまっているところがある。子どもは熱もなく、元気なのであるが、経過が悪いと弱視になってしまうこともある病気であるから、出席停止を含め感染対策をとるようにお願いしていかなけれならないと思う。
処方したい薬が処方できない状況は数年前から時々あった。
中国から薬の原材料が入ってこないから製造できなくなった薬、ジェネリックを作っている会社がつぶれて供給が減った薬、新型コロナ感染症の流行により需要が高まり生産が追いつかない薬など、いくつかの理由がある。
最近では、解熱薬(アセトアミノフェン)が減っている、咳止めが減っている、トランサミン®など喉の炎症を抑える薬がなくなっている。
そして、今、とっても困っているのは、抗菌薬がなくなっていることである。
私は不必要な抗生剤は出したくないと思い診療している。このために苦労している気がする。でも、絶対処方したい時がある。
現在、溶連菌感染症が流行しており、これは抗菌薬で治療しないといけない。
ペニシリン系抗菌薬がいいのだが、これが全くない。仕方がないので、2番目に使うことになっているセフェム系抗菌薬、メイアクト®を出していた。そしたら、それもなくなったと薬局から連絡あり。フロモックス®に変更したが、これらのセフェム系の抗菌薬も在庫限り、いつ入荷するかわからないとのことである。
他にも、とびひなどの皮膚感染症にはケフレックス®を出していたが、これもない。
メイアクト®、フロモックス®など第3世代セフェム系抗菌薬は吸収も悪く、たくさんの菌に効く抗菌薬で、正常細菌叢を乱し、抗菌薬の効かない菌(耐性菌)を増やしてしまうため、使いたくない抗菌薬であったのだが、仕方がない。なんとも、心苦しい医療になっている。
患者さんのお薬手帳を見ると、喉から手が出るほど欲しいワイドシリン®(ペニシリン系抗菌薬)が処方されている。たくさん抗菌薬を処方するクリニックの患者さんが行く薬局には在庫があるのである。薬の供給が少なくなると、薬の分配は今まで取引が多かった薬局から分配される。うちのように適正使用を心がけ使用量が少ないと、そこの薬局には分配が来ない仕組みである。ひどいなーと世の不条理を悲しく思う。
製薬会社さんも当然、もうからないことにお金はつぎ込まない。
ペニシリンなどの昔からある抗菌薬は薬の値段も安く、全くもうからないと思う。世の流れは、抗菌薬の使い過ぎはよくないと、使わない方向が推し進められ、使用量は減っている。
薬には消費期限もあり、売れなくて破棄する薬が増えたら、全くの赤字である。赤字にならないようにぎりぎりの生産しかしていないのであろう。だから、ちょっと使う量が増えると足らなくなる。こういう最低限必要な薬は、国が生産に対し補助してほしいと思う。
患者さんの不利益をなるべく少なくして、抗菌薬不足をどう乗り切れるか悩める日々である。全く見通しは立っておらず、先は長い。
著者 たかのこどもクリニック 院長 高野智子
アレルギー
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