ぼちぼち通信
ぼちぼち通信
お元気ですか。
神戸でも雪が降りましたね。めったにないことだろうに、クリニックを開けることに必死で、写真を撮るのを忘れました。
雪の降る地域で育った私には、この程度の雪、なんてことないという感覚がありました。でも、昔なんてことなかったのは、皆の車がスノータイヤをはき、すぐに除雪車が出てくれ、そして、家の前の雪かきをしてくれるおばあちゃんがいたからであると気が付きました。それらがない神戸では大変でしたね。
立春が過ぎて、日差しが明るくなり、空が高くなっています。春はもうすぐです。
2023年度から(10月からとの新聞記事でした)神戸市でも高校生の通院の医療費が1回400円、月2回までが適応されるようになるとのこと、よかったです。
教育とか医療とか、子どもの基本的人権にかかわることが住む地域によって違うのはおかしいと思っています。選挙での1票の格差が問題になっていますが、それ以上の問題ではないかと思います。
お隣の明石市は高校生まで医療費が通院、入院ともに無料です。他にも、0歳児の見守り訪問とともにおむつやミルクの無償化、保育料が2人目から無料、中学校の給食無償など、利用者が喜ぶようなサービスがあります。https://www.city.akashi.lg.jp/shise/koho/citysales/kosodate/index.html
神戸市との境の明石市に住む患者さんが、「神戸に住んだ気分で明石の福祉を受ける」と言われたのに、なるほどと思ってしまいました。
明石にできることが神戸市にできないのか不思議でした。神戸の市長さんは人口規模が違うと言っていましたが、神戸市より大きな大阪市で高校生までの通院医療費助成があるのに・・・。何に税金を使うかの問題でしょう。
高校生は微妙な年齢です。小児科にかかるのも何か気恥ずかしく、老人患者さんの多い内科へ行くのもなんかなじまず、なのではないかと思います。高校生はCOVID19流行までは感染症も少なく、小児科医も得意でないかもしれない。
頭痛、腹痛、倦怠感などを訴え、学校に行けない高校生はかなりいて、不登校として対応していいのか、大きな身体的疾患なのか悩めます。検査するにしても、結構医療にお金がかかり、親もためらうこともあります。
こども医療で補助していただけるのはとっても助かります。神戸市さん、ありがとう。
と、患者さんから言われました。
以前の病院でのデータですが、確かに抗菌薬(≒抗生剤)の処方数は減っています。
昔はたくさん抗菌薬を出していました。1990年代にはセフゾン、トミロン、バナン、フロモックス、メイアクトなど新しい抗菌薬が次々出てきて、昔のよりいいという説明を受けました。私が研修医のころ、上級医の先生からも高熱があったら抗菌薬を出していいという指導を受けていたように思います。
しかし、2004年医者の新しい研修システムがはじまってからでしょうか、感染症を専門とする先生から抗菌薬の適正使用、風邪に抗菌薬を出してはいけないという教育が若い医者にされるようになりました。
さらに、小児科医にとって大きいのは、2013年からヒブ(インフルエンザ菌b型)ワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンが定期接種になって、皆さんがうってくれるようになったことだと思います。
このワクチンが出るまでは、小さい子の菌血症(血液に細菌が入ること)は多くて、高熱が出ると菌血症の可能性もあるから、抗菌薬を出しておこうとなっていました。それが、これらのワクチンが定期接種となり、菌血症、細菌性髄膜炎が非常に減るのを実感できるようになりました。そして、熱があるからと言って抗菌薬を出さなくていいなと思うようになりました。
世界的には2015年にWHOから、このまま耐性菌(抗菌薬の効かない菌)が増えると、2050年には耐性菌で死亡する人が世界で1000万人/年となり、癌による死亡を超えると発表されました。それは大変と、WHOの提言のもと、各国が薬剤耐性に関する国家行動計画を作り、抗菌薬の適正使用が言われるようになりました。
人間は皮膚表面、のど、消化管などにたくさんの菌がいて、その人が元気な時は共存しています。その中には耐性菌も混じっていることもあり、抗菌薬を使用すると抗菌薬の効く菌が死んで、耐性菌が生き残りやすいです。
耐性菌も皮膚表面、のど、消化管などにいるだけなら何も悪さはしないです。
菌が血液、髄液(脳をつつむ液)、肺、腎、皮下などに入り込むと病気を起こします。その時、抗菌薬で治療しますが、それが耐性菌だと一般的な抗菌薬では効かず、病気が治らないことになります。他の抗菌薬に変えたりして手を尽くしますが、どれも効かないとギブアップとなってしまいます。
時々有名人が菌血症で亡くなっているのは、耐性菌によるものかもしれません。
風邪の時に抗菌薬を飲んでも、その時には下痢をするくらいしか悪さをしないでしょう。でも、抗菌薬を投与することで、抗菌薬の効く菌が死に、耐性菌だけが生き残ってしまったら、将来それらの菌が体の奥に入り込んだ時に、困ったことになるかもしれない。その耐性菌が人にうつっていくかもしれない。
我々は抗菌薬の必要な時を見極めて、使っていかなければいけないと思います。子どもたちの将来のために。耐性菌で死亡することがないように。
著者 たかのこどもクリニック 院長 高野智子
アレルギー
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