ぼちぼち通信
ぼちぼち通信
一般の方が感染するのは仕方ない、近くに感染者がいるかどうか、時の運だと思っていた。
たくさんウイルスを排泄する人がいたら、普通のマスクでは防ぎきれないのではないか。
しかし、我々医療者は、感染対策がとれるのだから、医療現場で感染するのはとっても恥ずかしいことだと思っていた。
が、私は感染してしまった。家族に感染者はおらず、どこにも(買い物すらも)出かけてないので、おそらく、仕事中に感染したと思う。
4月になって検査の陽性率が20%くらいに減っていた。検査数も減っていたから、外来の後半が検査を受ける方と一般診察の方の診察が、時間的に混ざったのがいけなかった。
防御服をつけたり外したりの作業がわずらわしかったし、危険だった。
とある人の検査に行ったとき、他の防御はしたのに、うっかりN95マスクをつけず、サージカルマスクで行ってしまった。
時間的にあの時感染したのだろうと思う。しまった。
始まりはだるさと喉にごみが付いたような感じからだった。
レセプト(医療請求)の作業をしないといけないのに、がんばれない。
週末だから疲れているのかと思いき、新型コロナの始まりだった。
その後3日間熱が出て、一晩は咳がひどかった。熱は上がり下がりして、下がると元気になり治った!と思うのであるが、急にしんどくなり熱が出ていることを繰り返した。
新型コロナ勃発のころは37.5度以上の熱が5日続いたら検査だったのかと改めて思い出した。
今のオミクロンならほとんどの人が良くなってしまう。
家族隔離のために療養所に入れていただいた。行政の方とは電話で何度かやり取りしたが、どの方も親切だった。
療養所に入るのにもお迎えに来ていただいた。ビジネスホテルのきれいなお部屋、3食付きで、ありがたい限り。
体温、脈拍、SpO2は器械を渡され、自分で測って、定時に看護師さんから電話で聞かれる。
始めは発熱があり、1日5回のバイタルチェックだった。食事は淡路屋のお弁当。毎日が旅行、学会という感じ。
運動が少ないこと以外は快適だった。
入所時に心のアンケートというのがあった。「絶望的ですか、自分は価値のない人間と感じましたか・・・」うつを見るような設問のよう。こんなん全くないわと思い答えたが、入所2日目の夕食の時、ご飯食べながらぽろぽろと涙が出てきた。
産後入院中も、こういうことがあったなと思いだした。産後はホルモン動くからそれもありかと思ったが、今回は何なんだろう。何が悲しいのかもわからない。元気になってご飯を食べられることがうれしくてか。こうやって、狭い空間に一人、誰ともしゃべらず、運動も少なくいるとおかしくなってくるのか。と思っていたら、新型コロナで脳が委縮したというニュース(https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60702748)が流れ、頭やられちゃったかなと心配になった。
幸い、家族もスタッフも感染せず、実行再生産数はゼロでよかった。
患者さんには非常な迷惑をかけ、スタッフや家族にも非常な迷惑、心配をかけ、誠に申し訳ありませんでした。感染対策を見直し、今回は私の不注意でしたので気を付けるようにいたします。
新型コロナ療養中は幸い、小児科学会があり、3日間webで楽しめた。
病院勤め中、入院しないといけないような子どもの感染症は減ってきたなと感じていた。
さらに新型コロナの流行のせいか、ここ2年は他の感染症の流行も少なく、感染症での入院はさらに減ったであろう。2次病院では入院が少なく症例がないと、医者になりたての若い先生が小児科で十分研修できない。さらに彼らに小児科の魅力をわかってもらえないのが残念である。
今回、小児科学会をゆっくり聞いて、小児科医のやるべきことはまだまだあると感じた。
その一つが『ケーキの切れない非行少年たち』問題である。これは、児童精神科医である宮口幸治先生が、犯罪を犯してしまった非行少年たちに対応した少年院での経験がかかれている。
非行少年には、知能が境界領域で、認知機能にゆがみをもっている子が多いそうである(決して、知能が境界領域だから、犯罪を犯すのではない)。
少年院で反省させて、非行を繰り返さないように教育しようとするのであるが、その反省からできないというのである。
いろいろなことを理解したり、考えたりするのに、多くの情報は見ること、聞くことから入ってくる。非行少年たちはその見たり聞いたりの情報が歪んでいる子が多いそうである。
例えば、ある図形を模写してくださいという課題が全く正確にできない。
同じものを見て同じように見えなかったとしたら、ある人がニコッと笑ったのが、にらんだと見えてしまうとしたら・・・。
にらんだから、殴ったと言われたら、「にらんでないよ」というところから教えないといけない。
犯罪はおかさなくても、こういう認知機能が低く、歪んでいる子はたくさんいるのではないであろうか。
知能が境界領域の子は子どもの14%くらいいるそうだから、勉強や学校生活で生きにくさを感じている子たちはたくさんいるのだろう。
そういう子たちの中には不適応をおこし、身体症状をきたす子、不登校になる子がいるのであろう。
我々はそういう子に出会うわけであるが、いい対応はないものかと学会を聞きながら思った。
この本は非行少年たちがケーキを等分に切れないという観察から始まっているが、彼らにはホールケーキを切るような状況にもなかったのではないだろうかと悲しくもなった。
今回の学会では、子どもの自殺、貧困、虐待などのセッションもあり、我々小児科医は病気だけでなく、こどもの健全な育ちをサポートするのが任務であると改めて強く感じた。
みんなが楽しく元気に飛べるように。
著者 たかのこどもクリニック 院長 高野智子
アレルギー
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