院長コラム
2022年4月から5月初め、カンピロバクター腸炎が8名いました。
カンピロバクター腸炎は下痢、腹痛をきたす細菌性胃腸炎の一つで、細菌性腸炎の中では一番多いです。
腸炎には人から感染するウイルス性腸炎(ノロウイルス胃腸炎、ロタウイルス胃腸炎、アデノウイルス胃腸炎など)と、食べたものから感染する細菌性腸炎(O157などの病原性大腸菌による腸炎、カンピロバクター腸炎、サルモネラ腸炎など)があります。
これらの区別は便からの原因ウイルス、菌を検査することによって行いますが、便をすぐ出してもらうことはできないことが多く、症状から行うことが多いです。
ウイルス性腸炎は嘔吐から始まり、水のような下痢をすることが多いです。
細菌性胃腸炎は嘔吐は少なく、発熱、下痢、腹痛の症状をきたすことが多いです。
血便を認めることもあります。カンピロバクター腸炎の子は頭痛を訴えることが多いです。
ウイルス性腸炎 | 細菌性腸炎 | |
---|---|---|
年 齢 | 3歳以下に多い | 2歳以上に多い |
症 状 | 嘔吐、下痢、発熱 | 発熱、下痢、腹痛 |
腹部所見 | ややおなかが張って、腸の動きが悪い | おなかの右側を押すと痛いことが多い |
便所見 | 水様便 |
便に血が混じることあり |
もう一つ有効な検査はエコー検査です。ウイルス性腸炎は小腸が蜂の巣のように拡張している所見を認めます。
一方、細菌性腸炎は大腸の壁が腫れています。
嘔吐や下痢で水分が失われるのと、食欲がなくなり水分を取りづらくなることにより、脱水になることが一番注意しないといけないことです。治療はとにかく、水分を取ることです。
水分は経口補水液(OS1)がいいですが、カロリーオフでないイオン水(ポカリスエット、アクエリアスなど)でもいいです。これらが嫌いなら、リンゴジュース+うどんの汁(寿がきやうどんスープなど)でもいいです。
とにかく、甘みと塩気と水分を取ることです。
吐いても、吐くのが治まって少し回復したら、水分を取っていくのがいいと思います。
水分を取るから吐くのではなく、胃に病原ウイルスや菌がいるから嘔吐するので、しんどいですが、悪いものは出すしかないと思って、水分とって頑張ってください。
しかし、嘔吐が始まって24時間たっても嘔吐するときは、脱水で嘔吐していることがありますから、受診しましょう。
下痢してきたら整腸剤を飲みます。
細菌性腸炎に対する抗菌薬は推奨されていませんが、治りが悪いカンピロバクター腸炎、サルモネラ腸炎に対しては使ってもいいと考えています。
予防は、口から感染するので、ウイルス性腸炎は手洗いです。しかし、手をなめるような小さい子は予防がなかなか難しいです。
細菌性腸炎は食べ物から感染するので、生肉を食べない、調理の時に肉を切ったまな板・包丁はきれいに洗う、生卵を食べるときは洗ってから割ることです。
日本では腸炎による脱水で命を落とすことは普通はないですが、腸炎で脳症をおこし命取りになることはあります。
ロタウイルスによる脳症は私でも症例の経験があります。ユッケの病原性大腸菌による脳症、溶血性尿毒素症候群は多数死亡例が出て社会問題となりました。
まれですが、カンピロバクター腸炎後のギランバレー症候群(手足に力が入らない・しびれる)もあります。腸炎といえども侮ることなかれ。
鶏肉の70%はカンピロバクター菌が付いているそうです。本来、肉に菌はいないのですが、鳥をさばいたとき、腸にいる菌で肉が汚染されてしまうようです。
鳥刺し、鳥生レバー、ユッケなど、生肉を食べるのはやめましょう。
これからバーベキューの機会も増えるかもしれませんが、肉はよく焼いて食べましょう。
著者 たかのこどもクリニック 院長 高野智子
アレルギー
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