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院長コラム-No.03|垂水区の小児科・アレルギー科 たかのこどもクリニック

院長コラム

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Incho Column

-日本脳炎と
日本脳炎ワクチン-

No.03
2021.02.15
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現在、日本脳炎ワクチンが不足している。日本脳炎ワクチンは国内で2社が作っているが、そのうちの1社がワクチン生産ラインにトラブルがあり、供給がストップしているためである。
2021年、日本脳炎ワクチン接種は2回受けていないお子さんが優先となっている。
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さて、日本脳炎とはどんな病気で、どれくらいの頻度があるのでしょう?実は私も患者さんを見たことがない。
でもワクチンがあるくらいなので、昔は大変な病気であったと想像される。

 

日本脳炎ウイルスはブタで増える。感染したブタの血を吸った蚊に刺されることで人が感染する。感染した人の300-1000人に一人くらいが脳炎を発症すると言われている。
ブタの日本脳炎抗体保有率の検査では、地域によっては80%以上のブタが抗体を持っていると報告されている(下の図のこげ茶のところ)国立感染症研究所【ブタの日本脳炎抗体保有状況 -2016年速報第8報-】
感染したブタの多い地域では蚊に刺されると、人も感染する可能性がある。西日本のブタに抗体保有率が高い。

2016年・2017年・2018年
ブタの日本脳炎抗体保有状況分布図

日本脳炎は発症すると20-40%が死亡し、助かった人も45-70%に精神障害などの後遺症が残るそうである。
国立感染症研究所【日本脳炎とは】

発生頻度は1950年ころ5000人余り報告されていたが、1954年に日本脳炎ワクチンが導入され、1967~1975年に特別対策で積極的にワクチンが接種されて、報告数は100人以下になった。1992年以降発生数は毎年10人以下である。これを見るとワクチンが非常に有効であったことが理解できる。日本脳炎の経験がない我々に、先輩の先生が「日本脳炎はワクチンで少なくなったのだからワクチンは絶対うたなきゃだめよ」と言われるのが納得できる。国立感染症研究所【わが国の日本脳炎に関する疫学情報-PDF】

日本脳炎患者報告数の変化グラフ

 

日本脳炎ワクチンは、初めは日本脳炎ウイルスをマウスに接種して、感染したマウスの脳からウイルスを精製し、それを病原性がないように不活化したものが用いられていた。マウスの脳の成分が入らないようにきれいにする過程が改良され、用いるウイルス株も中山株からより効果的な抗体を作る北京株に変更された。
しかし、2004年にこのワクチンをうった中学生が重篤な脳障害(急性散在性脳脊髄炎)をおこし、マウス脳由来ワクチンが異常な免疫反応を起こすことが原因でないかと推測された。そのため、2005年5月~2009年はこのワクチンの接種勧奨が抑えられ、ほとんど接種しない状況になった。
2009年に細胞培養による不活化日本脳炎ワクチンが開発され、日本脳炎ワクチンは現在使っているワクチンに置き換わった。国立感染症研究所【日本脳炎ワクチンの歴史と, マウス脳由来ワクチンから組織培養ワクチンへの変更について】

 

ワクチン接種が止まっていたころ、子どもの日本脳炎の報告が目立つようになった。
2006年3歳児、2007年19歳、2009年1歳児、8歳児、2010年6歳児、2011年1歳児、10歳児、2015年10か月児。ワクチン接種をしなかった年代と3歳以前のワクチン接種前の子どもたちが多い。
2015年10か月児の症例は詳しい報告がある。
国立感染症研究所【日本脳炎ワクチンの歴史と、マウス脳由来ワクチンから組織培養ワクチンへの変更について】
この児の自宅近くには水田が多く、この児は頻繁に蚊に刺されており、自宅から10km以内に養豚ファームが点在し、 約500m離れたところにブタの食肉工場があったそうである。この症例は後遺症が残った。
この例から、高リスク地域(近くに養豚場がある地域)では生後6か月以降早期にワクチン接種を行うべきであると小児科学会は提唱したが、ほとんどの自治体が3歳での接種を推奨している。これはもっと議論するのがいいのではないかと思う。(2021-2-12)

 

著者 たかのこどもクリニック 院長 高野智子

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