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ぼちぼち通信-No49|垂水区の小児科・アレルギー科 たかのこどもクリニック|

ぼちぼち通信

ぼちぼち通信
BochiBochi Tsushin
No.49

2025.2

 

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寒いですね。

朝起きたときの室内温7℃。六甲山のふもとにいたときは4℃というときがあったから、それよりはましなのだけれども。年々寒さに弱くなっている気がします。

インフルエンザAの流行はうそのようにおさまり、今は胃腸炎、COVID19、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、百日咳などいろいろ出ています。RSは小さい子の感染症かと思っていたけれど、10-14歳でRSが出る。ヒトメタニユーモは3-5月に多いと思っていたけれど、冬も出るなど、感染症の動向が変化しているのか、検査するからなのかわからない。
そして、いま私の関心事は百日咳です。

-マクロライド耐性百日咳が出ています-

12月末から2月初めに7例の百日咳を経験しました。

いずれも学童例、7から12歳。咳がひどいと来院される。 昨年、流行っていた熱のないマイコプラズマや、隠れ喘息、咳喘息、アトピー咳などアレルギー疾患も疑われる症状である。

 

始めはよくわからなかった。
マイコプラズマの検査をしたり、喘息の検査をしたりしたが、有意でない。
昨年夏に、Spot Fireという一度に14種類の呼吸器感染症の原因が核酸検査できる機械を買った。私のおもちゃである。
それをやってみた。百日咳陽性と出た。

 

3週間ほど咳は続いてはいるが、ほんまかいなと半信半疑であった。みんな、3種もしくは4種混合ワクチン(百日咳ワクチンも含まれる)はちゃんとうっている。

神戸市健康科学研究所感染症部に検査に出した。 菌の培養で陽性(やはり菌はいた!)、かつマクロライド耐性(クラリスロマイシンなど百日咳の治療に用いる薬が効かない)で、日本で初めての遺伝子型だそうである。

 

それから1か月ほどの間にさらに6例の百日咳がでた。

全部で6例、研究所で詳しい検査をしてもらい、6例とも百日咳は陽性、そのうち4例がマクロライド耐性百日咳であった。

 

2例が同じ小学校であるが、他はちがう。
このあたりで、百日咳が流行っていそうである。
学童の子が感染しても咳がひどいのではあるが、学校へは行っている。入院するような症状ではない。

 

しかし、これが5種混合ワクチンのすんでない赤ちゃんに感染したらどうだろう。 全国の先生に聞いてみた。

東京、沖縄、大阪、兵庫のこども病院で、重症の百日咳の子が入院していた。 百日咳はワクチン接種前の赤ちゃんがかかると、無呼吸発作を起こしたりして死に至ることもある病気である。それが、薬の効かない菌であったら、さらにてこずるであろう。

 

これはまずい!

赤ちゃんにうつさないために、学童の子もかからないようにしないといけない。

そのためには、任意接種で勧められている年長児への3種混合ワクチンを受けていただくようにするしか、今のところ手だてがない。3種、4種混合ワクチンは学童くらいになると免疫が落ちてくるそうである。

 

神戸市には3種混合ワクチンの接種補助を出していただくようにお願いしていきたいが、なかなか通らないであろう。
とりあえず、当クリニックでは2025年2月より、年長さん以上を対象に3000円で3種混合ワクチンをうちましょう。
特に、近々赤ちゃんが生まれるご家庭の年長さん以上は3種混合ワクチン接種を勧めます。

-雪の花-

雪の花という映画をみてきた。

かつて、天然痘(痘瘡)という、発熱し、水痘よりもっと大きな発疹が出て、かかると30%は死ぬという病気があった。
それに対するワクチンを日本で始めた人の話である。ワクチンという概念もないところから、始めたのであるからすごい。
天然痘は世界でワクチン接種が進み、1980年に世界根絶宣言が出されている。

 

牛痘(天然痘の牛版)は牛が感染すると重症になるが、人が感染した場合は軽症ですみ、牛痘にかかった人は天然痘にかからないという観察があった。それにもとづき、牛痘の水疱の成分を人の皮下に埋め込んで免疫をつけて、天然痘にかからないようにしようという考えから始まった。
天然痘は死の病と恐れられていた時代に、牛痘とはいえ、病気の元を埋め込んで本当に大丈夫かと心配であったであろう。
うけていたのはこどもであった。


牛痘の水疱の成分を保存する手段もなく、人から人へ植え付いだ。

京都から福井へ運ぶときは、雪の季節になり、吹雪の中をワクチンをうったこどもを連れて、医者と親子が死にそうになりながら移動するシーンもあった。

 

吉村昭 雪の花これは吉村昭の小説を映画化したものであるが、小説では市民にワクチンが受け入れられなくて苦労したことがもっと書かれていたように思う。

こんなおっかないものをうった人の方が偉い。

 

天然痘を治したい、治せないなら予防したいという医師の熱意が、殿様、奉行所を動かし、接種が進んでいったようであった。
医師の熱意と行政の力を感じた。
こういう歴史の中に今のワクチンがある。

 

著者 たかのこどもクリニック 院長 高野智子

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